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白いリボン Comments (20)
この居心地の悪さ…このべっとりとした感触……禍々しさの極地。
たまたま、ふらっと立ち寄った農村が、まさかこんなに陰鬱で鬱屈で、抜け出そうとしてもなかなか抜け出せず、145分間足留め喰らってやっとこさ逃げ出した気分、とでもいうか。
滞在中も滞在後も、決して心の靄が晴れることはないです。
なのに、こんだけの悪意を内包しておきながら、それが表層に剥き出されることは終ぞない。表面に、僅かに、滲み出るだけ。
片鱗をチラチラ覗かせたと思うと、またナリを潜める。再び、更なる悪意が来訪。
その繰り返し。
その息苦しさを味わいながら、145分間の拘束が続く訳です。
そして、やっと訪れる終焉。
「白いリボン」というタイトルに込められた真の意味。
コトの真相とでもいうか。
ラストにそれを理解、目の当たりにした時です。
アナタもきっと、長い溜め息を付くことでしょう。
ただ…その真相が具体的な像で以って姿を現すことは、最後まで無いのですけど。
そこに暮らす人々のあいだにある「善悪」という価値観。
リアル「村社会」を、すさまじいまでに緻密に描いている。
男爵がいて、小作人が大勢いて、牧師がいて、
学校は教会の付属品で、教育は厳格なキリスト教のもとにあって。
起承転結とかじゃなく、見終わった後に
観た人のなかに続いていくものを想定して作られていて、
物語、というより、145分かけた「問いかけ」のよう。
淡々としているのに目が離せない。
モノクロの映像も繊細で美しい。
カラーで撮影して、デジタル変換してるんだそうだ。
映画史に残る、というか
残ってほしい映画だなーと思った。
『ウィークリー』誌のレビュー、「すでに古典。」という言葉に納得。
だが決して、過去の話じゃない。
と監督は言いたいのではなかろうか。
レディースディに観に行ったせいもあるのだろうけど、満席だった。
この「白いリボン」。
なんといっても画が美しい。
モノクロだけど、カラー以上に実態に近いのだと思う。
くっきりとした輪郭、陰影に富んだ画つくり。
どの画面も一個の絵画のようだ。
アートとしてより際立っている作品である。
この「白いリボン」。
なんと解釈すればいいのか。
美しい山村を描いているが、その裏面になにがあるのか。
迷わせるものが、充満しているのだ。
男爵、牧師、医者、教師、そして女やこどもたち。
そこに現れる息苦しい日常生活がある。
この「白いリボン」。
なんといえばいいのか。
静かな暮らしがあるのだが、その奥底にはなにがあるのか。
嫌悪し、唾棄したいことがあるのだ。
権威、権力、傲慢、横暴、そしてそれへの反発。
抜けられない規律と背理がある。
そう、
そこから逃げ出すために戦争があった。
ナチスドイツの台頭もあったのではないか。
なんとも恐ろしいことだけど、
それもひとつの真実かもしれないと思った。
ミヒャイル ハイネ監督の普遍的なアートがそこにあった。
ヒトラー誕生のその時、あなたは何を観ていたのだ?