ソングス・フォー・ドレラ
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Oct,28 2022 EN LOS CINES
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タゴール・ソングス Comments (3)
タゴールソングスの映画であって、タゴールの映画ではありません。
タゴールソングスというと一連の楽曲があるのかと思っていましたが、そうではなく(いや、そうなんですが)、もはやタゴールの手からは離れ、人々がそれぞれ自分の解釈するタゴールソングを歌う、そのような存在のようです。歌い手の使う楽器もバラバラです(見たこともない良い音出す楽器がいくつも出てきて、興味をそそられました)。
ですから、タゴールソングを師や先生から「習う」ということを理解するのに少し時間がかかりました。
日本で無理矢理例えるなら、昔の義太夫節であるとか長唄、民謡、そういったものが近いのでしょうか。
国や文化が違っても同じ人間として通底するものを感じる瞬間が、外国が舞台のドキュメンタリーを観るときの個人的な醍醐味なのですが、そういったものを感じさせてくれる作品でした。
訳の上手さもあるのでしょうが、撮影対象の立場を考えたとき、タゴールの詩が心に刺さり、いたく共感してしまうシーンがいくつもありました。
撮影自体は淡々としたもので、解説的なナレーションや挿入も皆無ですが、タゴールの詩の雰囲気に合っていて効果的だと感じました。
(対象の青年と一緒に列車の屋根に乗るシーンを撮るのは結構怖かったのでは、と勝手に想像したりもしました)
逆に、作曲は誰なのか?(これはパンフレットに書いてありました。本人なのですね、驚きました。)なぜここまで広まったのか?といった点はよく作品からは分かりませんでした(作品の主旨とは関係ないので良いのですが)。
ただ、個人的には最終盤の来日のシーンは蛇足だと感じました。来日の経緯が描かれておりませんし(タゴールの本に日本に行ったことがあると書いてあった、だけでは動機として余りに弱く、招いたのか否かも不明ですし)、シーンの雰囲気も変わりすぎて突拍子もなく感じ、単なる観光旅行(にしか見えませんでした)に同行する大きな意義があったのか、疑問です(日本以外の国であったら同行撮影したのでしょうか?)。直前のお師匠さんのシーンがすごく良かっただけに、あそこで終わっていてくれた方が…と感じてしまいました。
全体としては美しくまとまっていて、タゴールソングスなるものの存在を教えてくれたこの映画に感謝です。
日本とバングラディシュの混血の就活中の女性とバングラディシュからやってきた女性が、日本で出会い友情を育むシーンが良い。時代も国も超えて人と人をつなげる芸術の力を感じさせてくれる。撮影技術も高く、美しいドキュメンタリーだ。
このドキュメンタリー「タゴール・ソングス」を見ると、タゴールがどんな人物で、どれだけインド、バングラデッシュ(=ベンガル地方全域)の人々に愛されていたかが分かります。ノーベル文学賞を1913年に受賞したといいますから、ボブ・ディランの100年前に偉業を達成した伝説のミュージシャンと言ってもいいでしょう。詩人ですが。しかしこの映画を見ると、彼が受賞すべきだったのは、ノーベル文学賞ではなくて、平和賞じゃないのかとすら思います。それほど、タゴールのベンガル人への浸透度は深くて大きい。これだけ人々に愛された偉人の生涯を、恥ずかしながら、まったく知りませんでした。
思えば、神楽坂のタゴールでは、インドのお香とともに、タゴールの歌が毎晩BGMで流れていたかも知れないのに、まったく記憶にない。そしてこの映画で流れるタゴール・ソングも、一曲として知ってる曲がないという……。なんだか「勉強やり直し」って気分になりましたね。