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紙屋悦子の青春 Comments (8)
冒頭からひとつひとつの場面が長い。場面も限られていて演劇みたいと思ったら、やはり戯曲が原作のようですね。
終盤、知世ちゃんの泣きがみどころ。なるほどこれがための原田知世キャスティングだったんですね。
最後にもらった手紙の内容が気になります(笑)
最初と最後の年老いた二人のシーンも
あたしはいらない(´ω`)
かえって松岡俊介の演技に釘付けだった
おはぎと赤飯が美味しそうだったなー
あと静岡茶ね
じんわり反戦
平和な部屋の中で音楽もなくひたすら喋るだけの舞台劇のような展開が、良く言えば慎ましさの中に哀しさがあるが、悪く言えば退屈。のんびりと静かに台詞だけで進む物語は、戦時中をどうもあまり感じさせない。厳しい生活や爆撃の恐怖もなく、生活感の薄い綺麗な物語に収まってしまっている。
それと出演者の演技が悪かったわけではないが、いやむしろ個人の演技力はあったと思うが、出演者の役柄の年齢が合っていないのではないか。この時代に嫁に行ったり特攻隊に行くような者ならばまだ20代前半や半ば程度だろうが、出演者は30代ばかりで40近かったりもする。それだからなのか、みんなやけに状況を理解して落ち着いていて、それが当たり前のように見えてしまって、本来あるべき若々しさというか新鮮な戸惑いや恥じらいが見られない。戦争のもたらす心の中の葛藤や恐怖や、頭で抑えようとして理解しようとして、それでも態度に出てしまうようなものが少ない。当時の状況を監督が映画に翻訳する過程において、戦争がこんなにも平和にどこか遠くて哀しいだけに描かれるというのに素直に共感出来なかった。
泣きました。号泣です。
これほどまでに泣かされた映画は初めてです。
黒木和雄監督の遺作です。
監督のライフワークだった戦争レクイエムはここに完結しました。
戯曲の映像化だけあり主な登場人物は僅か5人だけ。主要なシーンは1軒の家の中にある丸い卓袱台と、お客様用のテーブルを挟んで交わされる台詞のみで、戦争の悲惨さと沈み行く日本を表します。
冒頭とラストの原田知世と永瀬正敏の老け役に若干の違和感は拭えないのですが、小林薫と本上まなみの‘夫婦漫才’でたっぷりと笑わせた後に、原田知世が本当に好いている人が去って行く悲しみをこらえる表情を見せた後から、展開される美しいまでの《日本人の慎ましさ》…ここから映画のラストまで泣き続けてしまいました。
簡潔なセットに、ワンシーンワンカットの長回しを多用しながらも退屈を感じさせない脚本と感情の起伏。そして素晴らしい演出力。
庭に咲く桜の花びらはほんの一瞬だけの満開を見せては儚く散ってゆく。
黒木監督にとって“死”とゆう現実を受け入れて完結したのか?それともまだ心残りだったのか?それは解りません。
その想いだけは観た観客総ての人に届いて貰える事を祈っています。
本当にお疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。
(2006年8月29日岩波ホール)
悦子が好きだったのは兄の後輩である海軍航空隊の明石少尉(松岡俊介)。しかし、突然舞い込んできた縁談は彼の紹介で整備工の永与少尉だった。美味しい静岡のお茶と甘いおはぎ。趣味について話をすすめるよりも食べ物の話題が縁を取り持つほど微笑ましいお見合い。女学校を出ていても文学や映画の趣味もない悦子の日常は、ほんの些細なことでも幸せを見出せるかのような慎ましい女性だったのです。ふさの言葉から推測すると悦子は寂しがりやのはずなのに、両親を東京大空襲で失っても凛とした態度で昭和を生きる女性でした。
沖縄奪還作戦に志願した明石が紙屋家を訪れたとき、永与からの縁談にも感情の揺れを見せなかった悦子の心理が大きく変化します。「なぜ戦争が起こるのか?」という疑問は序盤に見せる後年のシーンで語られますが、ただ平凡に生きたいと願う彼女に好きだった人を戦争に奪われる悲しさが堰を切ったように押し寄せてしまうのです。もう家族は失いたくないという心。純粋に祖国のために命を賭ける明石はその彼女の気持ちをも考えて、信頼できる永与に悦子を託したのでした。この手紙の内容はわからないものの、永与の言葉や、会話の中でちょっとだけ見せる明石の悦子に対する想いが観客の想像力をたくましくしてくれる。こうした手法も好きです。
海軍基地も飛行機整備工場も登場しない。戦争の映像だって一切登場しないのに、ここまで戦争の無情さを伝えてくる脚本の上手さ。戦争の悲惨さはなにも戦場だけではなく、一般家庭の食卓にだってあるんだ。そうした黒木監督の想いが伝わってくる。赤飯とらっきょうを食べれば死なないという噂が本当だったらと願う一般庶民。小さな幸せしか望んでいない人たちがもっと声を上げられる世の中にしなければならないのかもしれません。また、『父と暮らせば』と同じく、残された人の悲しさや苦悩も伝わってきました・・・